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退職のものさし 辞め方の、ものさし。

送別の言葉とはなむけの名言5本。色紙に書いても困らない言葉と一言文例

贈る言葉は、残ります。だから確かめてから書きます。

色紙は捨てられません。10年後に開いても恥ずかしくない言葉を、出典と権利の両方から選びました。

送別・はなむけに贈れる名言5本

5本とも、著作権の保護期間が終わった言葉です。色紙にも寄せ書きにも、そのまま書けます。発言者の名前も、原文まで当たって確かめました。そこを確かめておく理由は、5本のあとに書いてあります。

5本の確認レベルと著作権区分を、先に1枚にまとめます。色紙に書くときに困るのは、言葉そのものより「誰の言葉として書くか」と「書き写して配っていいか」の2つだからです。同じ内容は各本の中にも書いてあります。

送別に贈れる5本の出典・確認レベル・著作権区分(いずれも2026年8月22日に当サイトが原典または国立国会図書館の記録まで確認)
言葉書き添える名前当たった出典確認レベル著作権区分向いている贈り先
諸君はこの颯爽たる……風を感じないのか宮沢賢治青空文庫『詩ノート』付録「生徒諸君に寄せる」〔断章七〕一次PD(保護期間終了)新しい仕事・学びへ進む人
山の動く日来る与謝野晶子青空文庫「そぞろごと」(『青鞜』第一巻第一号・1911年9月1日)一次PD(保護期間終了)長く同じ場所にいた人。事情を全部は知らないとき
ああここにおれの進むべき道があった!夏目漱石青空文庫「私の個人主義」(大正3年・学習院輔仁会での講演)一次PD(保護期間終了)次の職場が決まっている人・独立する人
千里之行、始於足下老子中國哲學書電子化計劃『老子』(道徳経)第六十四章一次PD(保護期間終了)異業種へ移る人・未経験の仕事に挑む人
為せば成る 為さねば成らぬ何事も……上杉鷹山(上杉謙信ではありません)レファレンス協同データベース(国立国会図書館)の出典整理二次PD(保護期間終了)役職・年齢を問わず。目上の人にも

1.「諸君はこの颯爽たる 諸君の未来圏から吹いて来る 透明な清潔な風を感じないのか」

諸君はこの颯爽たる
諸君の未来圏から吹いて来る
透明な清潔な風を感じないのか

宮沢賢治「生徒諸君に寄せる」〔断章七〕。青空文庫『詩ノート』付録に収録(底本は『宮沢賢治全集2』ちくま文庫)。一次/PD

賢治が花巻農学校の教師をしていたころ、生徒に向けて書いた詩です。門出の言葉としてこれ以上のものを見つけるのが難しいくらい、まっすぐな一節。「未来圏」という賢治の造語が効いていて、風は先のほうから吹いてくる、という向きになっています。

同じ詩の別の断章には「新らしい時代のコペルニクスよ/余りに重苦しい重力の法則から/この銀河系統を解き放て」もあります。重力から解き放て、というのは、組織を出る人にちょうどいい比喩かもしれません。

贈るなら:新しい仕事や学びへ進む人に。長いので、色紙なら3行そのままか、「未来圏から吹いて来る風」だけを抜いて添え書きにする形が収まります。

2.「山の動く日来る」

山の動く日来る。

与謝野晶子「そぞろごと」(『青鞜』第一巻第一号・1911年9月1日)。青空文庫収録。一次/PD

平塚らいてうたちが創刊した『青鞜』の1号目に、晶子が寄せた詩の冒頭です。動かないと思われていたものが動く日が来る、と書きました。

短いので色紙に強い言葉です。そして主語が「山」なので、贈られた側の事情に踏み込みません。「あなたは正しい」とも「新しい門出だ」とも言っていない。事情をこちらが全部は知らないとき、この距離感は使いやすいです。

贈るなら:長く同じ場所にいた人が動くとき。字数が少ないので、寄せ書きの真ん中にも置けます。

3.「ああここにおれの進むべき道があった! ようやく掘り当てた!」

ああここにおれの進むべき道があった! ようやく掘り当てた!

夏目漱石の講演「私の個人主義」(大正3年/1914・学習院輔仁会)。青空文庫収録。一次/PD

漱石は大学の教師を辞めて新聞社に入り、小説を書きました。この講演で学生に語っているのは、そこにたどり着くまでの長い手応えのなさのほうです。他人の言葉を借りているうちは借り物のままで、自分の鶴嘴で掘り当てるしかなかった、と。

祝いの言葉として使うなら、掘り当てた瞬間の叫びとして。 転職先が決まって送り出す相手には、これがよく合います。逆に、行き先が決まっていない人には少し早い言葉なので、その場合は次の2本のほうが安全です。

贈るなら:次の職場が決まっている人、独立する人、学び直しに進む人へ。

4.「千里之行、始於足下」(千里の行も足下より始まる)

千里之行、始於足下。

『老子』第六十四章。原文は中國哲學書電子化計劃で確認。一次/PD

「千里の道も一歩から」として知られる一句です。漢文のまま書いても、読み下しで書いても様になるので、色紙に向いています。

老子の第六十四章は、もともと「小さいうちに手を打て」という実務の話でした。壮大な励ましではなく、今日の一歩の話をしている。これから知らない場所で一から始める人に贈ると、精神論になりません。

贈るなら:異業種へ移る人、未経験の仕事に挑む人、独立する人へ。四字だけ抜いて「始於足下」と書く形もあります。

5.「為せば成る 為さねば成らぬ何事も 成らぬは人の為さぬなりけり」

為せば成る 為さねば成らぬ何事も 成らぬは人の為さぬなりけり

上杉鷹山が家臣に与えた歌。表記と出典の整理はレファレンス協同データベース(国立国会図書館)。二次/PD

送別の色紙でいちばん見かける歌かもしれません。上杉謙信の作として紹介されることがありますが、レファレンス協同データベースは鷹山が家臣に与えた歌として整理しています。書き添える名前を間違えやすい一首なので、贈る前にここだけ確かめてください。

詠んだのは、傾いた米沢藩の財政を立て直した藩主です。気合いの歌ではなく、手を動かした人の歌として読むと、贈り先を選びません。

贈るなら:役職や年齢を問わず使えます。目上の人へ贈る場合も、精神論の押し付けになりにくい一首です。

そのまま使える一言文例

名言を1本置いたら、その人にしか書けない一行を足してください。残るのはたいてい、そちらのほうです。以下の文例は当サイトで書き下ろしたもので、権利の心配なくそのまま使えます。

次の行き先が決まっている人へ

  • 「新しい場所でも、〇〇さんの丁寧さは通じます。またどこかでご一緒できますように。」
  • 「初日にいちばん緊張しているのは、たぶん新しい職場のほうです。いってらっしゃい。」
  • 「引き継ぎのメモが分かりやすすぎて、みんなで感心していました。あの丁寧さごと、持っていってください。」

行き先が決まっていない人へ

  • 「しばらくゆっくりしてください。急いで決めた人より、休んでから決めた人のほうが、たいてい遠くまで行きます。」
  • 「次が決まってから連絡をくれてもいいし、決まる前に飲みに行ってもいいです。どちらでも。」
  • 「一緒に働けた時間のほうを覚えています。これからの話は、また今度で。」

事情を全部は知らない相手へ

  • 「詳しいことは聞きません。ここで一緒にやれた〇年は、こちらにとってはよかったです。」
  • 「お疲れさまでした。まずは、よく眠ってください。」
  • 「またどこかで会ったら、そのとき話してください。」

目上の人・上司へ

  • 「〇〇部長にいただいた『まず事実から見よう』という言葉は、これからも使わせていただきます。」
  • 「長い間、ありがとうございました。次の道が、〇〇さんらしい道でありますように。」
  • 「教わったことを、下の世代にそのまま渡していきます。」

短く済ませたいとき(寄せ書きの1マス)

  • 「ここまで、ありがとうございました。」
  • 「いってらっしゃい。またどこかで。」
  • 「お世話になりました。次も応援しています。」

書く前に確かめる、2つのこと

送別の言葉で失敗が起きるのは、たいていこの2つです。

1つめ。偽名言を書いてしまう。 送別の定番として回っている言葉には、別人のものが混ざっています。たとえば「20年後、あなたはやったことよりも、やらなかったことに失望する」はマーク・トウェインではなく、1990年の別の本にある著者の母の言葉です(検証)。「生き残るのは変化に対応できる種である」もダーウィンではありません(国立国会図書館の調査事例)。色紙は残ります。名前つきで書くなら、その名前が正しいか確かめてからのほうが安全です。

2つめ。著作権が残っている言葉を、書き写して配ってしまう。 保護期間の終わった言葉(パブリックドメイン)なら、色紙にも寄せ書きにも自由に書けます。まだ権利が残っている作家や書家の言葉を、書き写して人に渡す場合は扱いが変わります。制度の考え方は文化庁の著作権のページにまとまっています。

上の5本は、この2つをどちらもくぐらせた言葉です。ほかの言葉を選ぶときも、名前と保護期間の2か所だけ見れば足ります。

送られる側になったときは

いつか自分が送られる側になります。そのときのページも用意してあります。

よくある質問

名言を色紙に書くと、著作権の問題になりますか
著作権の保護期間が終わっている(パブリックドメインの)言葉なら、自由に書けます。このページで選んだ5本は、すべて保護期間の終わったものです。まだ著作権が残っている作家や書家の言葉を書き写して配る場合は、扱いが変わります。判断に迷うなら、保護期間の切れた言葉から選ぶのが確実です。
送る相手が、円満に辞めるわけではなさそうです
「新たな門出」「次のステージ」といった前向きな言葉が、事情を知らないまま届くと刺さることがあります。その場合は、これからの話ではなく、一緒に働いた時間の話に寄せてください。このページの文例にも、その型を入れてあります。
上司に贈る言葉と、同僚に贈る言葉は変えるべきですか
変えるのは敬語のレベルだけで足ります。内容は、相手と自分のあいだに実際にあった出来事を1つ入れるほうが効きます。役職に合わせて名言を選び分けるより、その人にしか書けない一行を入れるほうが残ります。

出典

  1. 青空文庫『詩ノート』宮沢賢治(付録「生徒諸君に寄せる」収録)(確認日
  2. 青空文庫 與謝野晶子「そぞろごと」(『青鞜』第一巻第一号・1911年9月1日)(確認日
  3. 青空文庫 夏目漱石「私の個人主義」(大正3年・学習院輔仁会での講演)(確認日
  4. 中國哲學書電子化計劃『老子』(道徳経)第六十四章 原文(確認日
  5. レファレンス協同データベース(国立国会図書館)上杉鷹山「為せば成る」の出典整理(確認日
  6. 文化庁「著作権」(保護期間などの制度解説)(確認日
  7. Quote Investigator「Twenty Years From Now You Will Be More Disappointed…」誤帰属の検証(確認日
  8. レファレンス協同データベース(国立国会図書館)ダーウィン「変化に対応できる種」の出典調査(確認日