退職代行に「頼める範囲」判定表 — 行為10項目×運営3類型
同じ「退職代行」でも、法律上頼めることは、運営しているのが誰かで変わります。 弁護士・労働組合・民間企業の3つで線の位置が違うので、料金だけを横に並べても差は見えません。
そこで、退職のときに実際に起きることを10項目に割って、3類型それぞれで頼めるかどうかを1マスずつ判定しました。30マス全部に、根拠の条文と、確からしさと、確認した日が付いています。
急いでいるなら、表は全部読まなくてかまいません。 困っていることから、見る行を決めるに5つ並べました。近いものが1つあれば、そこで答えが出ます。
判定表 — 行為10項目 × 運営3類型
縦が「頼みたいこと」、横が「運営しているのは誰か」です。行の名前を押すと、その行の解説へ移ります。
| 頼みたいこと | 民間企業 | 労働組合 | 弁護士 |
|---|---|---|---|
| ① 退職の意思を会社に伝える | 頼める(C) | 頼める(C) | 頼める(A) |
| ② 会社からの連絡を本人へ取り次ぐ | 条件つき(C) | 頼める(C) | 頼める(A) |
| ③ 有給を使いたいという希望を伝える | 条件つき(C) | 頼める(C) | 頼める(A) |
| ④ 有給の日数・退職日の条件を交渉する | 頼めない(C) | 条件つき(C) | 頼める(A) |
| ⑤ 未払いの賃金・残業代の支払いを求める | 頼めない(C) | 条件つき(C) | 頼める(A) |
| ⑥ 金額と支払期日を詰めて合意する | 頼めない(A) | 条件つき(D) | 頼める(A) |
| ⑦ 会社からの損害賠償請求に対応する | 頼めない(C) | 頼めない(C) | 頼める(A) |
| ⑧ 労働審判・訴訟の代理人になる | 頼めない(A) | 頼めない(A) | 頼める(A) |
| ⑨ 貸与品の返却・私物受け取りの連絡 | 頼める(C) | 頼める(C) | 頼める(A) |
| ⑩ 離職票・退職証明書などの交付を求める | 条件つき(C) | 頼める(C) | 頼める(A) |
- 頼める
- その運営形態の権限の中に、この行為が収まると解説されています
- 条件つき
- 形を守れば頼めるとされる行為です。線を越えた瞬間に別の話になります
- 頼めない
- その運営形態では扱えないとされる行為です。頼むなら上の段の類型になります
- (A)
- 条文が可否を直接書いている(原文を確認済み)
- (B)
- 官公庁の公式解説で確認できる
- (C)
- 条文はあるが、この行為への当てはめは行政解釈・専門家解説の紹介にとどまる
- (D)
- 解釈が分かれている。両論を併記する
かっこの中のA〜Dは、その判定をどのくらい信じていいかの目盛りです。Aは条文にそのまま書いてあること。Bは官公庁の解説で確かめられること。Cは条文はあるけれど、この行為に当てはまるかどうかが専門家の解説どまりのもの。Dは、専門家の間でも見方が割れているところです。 (Bのマスは、この表にはまだありません。退職代行そのものを整理した官公庁のページが見つかっていないためです。) 当サイトは、CやDを「絶対にできます」と言い換えることはしません。
確度の内訳は、条文が直接書いているもの 13 マス、当てはめが解説の紹介にとどまるもの 16 マス、解釈が分かれているもの 1 マス。判定の内訳は「頼める」 17 マス、「条件つき」6 マス、「頼めない」7 マスです。
困っていることから、見る行を決める
自分の用件がどの行に当たるかが決まれば、届く類型は自動的に決まります。近いものを1つ選んでください。
| いま困っていること | 届く類型と、見る行 |
|---|---|
| もう行きたくない。それだけ | 民間企業/労働組合/弁護士 伝えることと事務連絡だけなら、3類型のどれでも届きます。料金で選べる場面です 見る行: ① 退職の意思を会社に伝える / ② 会社からの連絡を本人へ取り次ぐ / ⑨ 貸与品の返却・私物受け取りの連絡 |
| 有給は、全部使ってから辞めたい | 労働組合/弁護士 希望を伝えるだけなら民間でも届きますが、会社が渋ったときに詰める人がいなくなります 見る行: ③ 有給を使いたいという希望を伝える / ④ 有給の日数・退職日の条件を交渉する |
| 払われていない残業代がある | 労働組合/弁護士 金額と期日を詰める段は解釈が分かれる帯です。争いになりそうなら弁護士の列を見てください 見る行: ⑤ 未払いの賃金・残業代の支払いを求める / ⑥ 金額と支払期日を詰めて合意する |
| 「損害賠償を請求する」と言われた | 弁護士 会社からあなたに向いた請求は、交渉の枠を超えます。ここは1列しか残りません 見る行: ⑦ 会社からの損害賠償請求に対応する / ⑧ 労働審判・訴訟の代理人になる |
| 離職票が届かない。手続きが進まない | 民間企業/労働組合/弁護士 請求を伝えるだけなら3類型とも届きます。会社が出してこないときに動けるのは上の2列です 見る行: ⑩ 離職票・退職証明書などの交付を求める / ⑨ 貸与品の返却・私物受け取りの連絡 |
なぜ、そこに線が引かれるのか
線を引いているのは、ほとんどが1つの条文です。弁護士法72条を、そのまま置きます。
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。
読むところは3つです。
- 「報酬を得る目的で」 — お金をもらって行う場合の話です。友人が代わりに電話をかけるのは、この条文の想定から外れます。
- 「法律事件に関して」 — 争いになっている、またはなりそうな案件を指す言葉として使われています。何が当たるかの線引きが、判定表のC欄が多い理由です。
- 「鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務」 — 「代理」と「和解」が名指しで入っています。判定表で⑥と⑧の民間欄だけが確度Aなのは、この2語が条文に直接あるからです。
違反したときの罰は同じ法律の77条3号にあり、2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金とされています。代行を頼む側ではなく、業として行う側にかかる規定です。
この条文を10行に当てはめていくと、線が3か所で動きます。動く場所には理由があって、そこがそのまま「どの類型を選ぶか」の分かれ目になります。
線その1 — 伝えるだけか、詰めるか
民間運営の代行が止まるのは、ここです。①②③は「あなたの言葉を運ぶ」仕事で、④は「会社と話をつける」仕事。日本語では地続きに見えますが、法律の側では別の行為として扱われています。
① 退職の意思を会社に伝える
「辞めます」と、代わりに言ってほしい
- 民間企業 頼める
-
あなたの意思をそのまま運ぶ伝言です。退職の申入れそのものは、あなたが民法627条1項でできる行為とされています
- 条文 民法627条1項 — 期間の定めのない雇用は、いつでも解約の申入れができ、申入れの日から2週間の経過で終了する、と定めています( e-Gov法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号)第627条 )
- 解釈 専門家解説の紹介 — 本人の意思をそのまま伝える使者にとどまる限り、弁護士法72条の法律事務にはあたらないと解説されています( ベンナビ労働問題「退職代行と弁護士法72条」 )
- 条文 弁護士法72条 — 弁護士でない者は、報酬を得る目的で、法律事件に関して鑑定・代理・仲裁・和解その他の法律事務を取り扱うことを業とできない、と定めています(違反は同法77条3号で2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金)( e-Gov法令検索 弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第3条・第72条・第77条 )
- 労働組合 頼める
-
組合を通した申入れとして伝えられます。交渉に入る手前の伝達なので、権限の問題は起きにくいとされています
- 条文 労働組合法6条 — 労働組合の代表者または委任を受けた者は、労働組合または組合員のために、使用者と労働協約の締結その他の事項に関して交渉する権限を有する、と定めています( e-Gov法令検索 労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)第6条・第7条 )
- 条文 労働組合法7条2号 — 使用者が団体交渉を正当な理由なく拒むことを、不当労働行為として禁じています( e-Gov法令検索 労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)第6条・第7条 )
- 解釈 専門家解説の紹介 — 労働組合の団体交渉として行う交渉は弁護士法72条違反にあたらないと判示した裁判例がある、と解説されています( 越水法律事務所「退職代行の法的な位置づけ」 )
- 弁護士 頼める
-
代理人として伝えられます。会社が受け取るかどうかは、条文上の終了時期に影響しないと案内されています
- 条文 弁護士法3条1項 — 弁護士は、当事者その他関係人の依頼によって、訴訟事件その他一般の法律事務を行うことを職務とする、と定めています( e-Gov法令検索 弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第3条・第72条・第77条 )
- 解釈 大阪労働局の案内 — 期間の定めのない雇用契約は、申入れの日から2週間で終了し、会社の同意は必要ないと案内されています( 大阪労働局 よくあるご質問(退職・解雇・雇止め) )
② 会社からの連絡を本人へ取り次ぐ
会社から電話が来ても、直接は出たくない
- 民間企業 条件つき
-
伝言を往復させるところまで。会社が出してきた条件に、あなたの代わりに返事を決め始めると、交渉の側に入ると解説されています
- 解釈 専門家解説の紹介 — 本人の意思をそのまま伝える使者にとどまる限り、弁護士法72条の法律事務にはあたらないと解説されています( ベンナビ労働問題「退職代行と弁護士法72条」 )
- 条文 弁護士法72条 — 弁護士でない者は、報酬を得る目的で、法律事件に関して鑑定・代理・仲裁・和解その他の法律事務を取り扱うことを業とできない、と定めています(違反は同法77条3号で2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金)( e-Gov法令検索 弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第3条・第72条・第77条 )
- 労働組合 頼める
-
窓口を組合に置く形です。会社からの連絡先を組合にすること自体は、交渉の入口として扱われます
- 条文 労働組合法6条 — 労働組合の代表者または委任を受けた者は、労働組合または組合員のために、使用者と労働協約の締結その他の事項に関して交渉する権限を有する、と定めています( e-Gov法令検索 労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)第6条・第7条 )
- 条文 労働組合法7条2号 — 使用者が団体交渉を正当な理由なく拒むことを、不当労働行為として禁じています( e-Gov法令検索 労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)第6条・第7条 )
- 解釈 専門家解説の紹介 — 労働組合の団体交渉として行う交渉は弁護士法72条違反にあたらないと判示した裁判例がある、と解説されています( 越水法律事務所「退職代行の法的な位置づけ」 )
- 弁護士 頼める
-
代理人が窓口になります。会社からの連絡は代理人あてに、という形が取れます
- 条文 弁護士法3条1項 — 弁護士は、当事者その他関係人の依頼によって、訴訟事件その他一般の法律事務を行うことを職務とする、と定めています( e-Gov法令検索 弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第3条・第72条・第77条 )
③ 有給を使いたいという希望を伝える
残っている有給は、使ってから辞めたい
- 民間企業 条件つき
-
「この日から有給にします」と伝えるところまで。年休の時季を指定するのはあなた自身の権利行使で、代行はその伝達にとどまるとされています
- 条文 労働基準法39条5項 — 使用者は、労働者の請求する時季に有給休暇を与えなければならない、と定めています(事業の正常な運営を妨げる場合は他の時季に与えられる)( e-Gov法令検索 労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第22条・第23条・第39条 )
- 解釈 専門家解説の紹介 — 本人の意思をそのまま伝える使者にとどまる限り、弁護士法72条の法律事務にはあたらないと解説されています( ベンナビ労働問題「退職代行と弁護士法72条」 )
- 条文 弁護士法72条 — 弁護士でない者は、報酬を得る目的で、法律事件に関して鑑定・代理・仲裁・和解その他の法律事務を取り扱うことを業とできない、と定めています(違反は同法77条3号で2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金)( e-Gov法令検索 弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第3条・第72条・第77条 )
- 労働組合 頼める
-
希望を伝えたうえで、会社が渋ったときにそのまま交渉に進めるのが労働組合の形です
- 条文 労働組合法6条 — 労働組合の代表者または委任を受けた者は、労働組合または組合員のために、使用者と労働協約の締結その他の事項に関して交渉する権限を有する、と定めています( e-Gov法令検索 労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)第6条・第7条 )
- 条文 労働組合法7条2号 — 使用者が団体交渉を正当な理由なく拒むことを、不当労働行為として禁じています( e-Gov法令検索 労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)第6条・第7条 )
- 解釈 専門家解説の紹介 — 労働組合の団体交渉として行う交渉は弁護士法72条違反にあたらないと判示した裁判例がある、と解説されています( 越水法律事務所「退職代行の法的な位置づけ」 )
- 弁護士 頼める
-
代理人として請求できます。会社の対応次第で、そのまま次の段へ進めます
- 条文 弁護士法3条1項 — 弁護士は、当事者その他関係人の依頼によって、訴訟事件その他一般の法律事務を行うことを職務とする、と定めています( e-Gov法令検索 弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第3条・第72条・第77条 )
④ 有給の日数・退職日の条件を交渉する
会社が「その日は無理」と言ってきたら、話をつけてほしい
- 民間企業 頼めない
-
条件を詰める行為は交渉です。報酬を得る目的でここへ踏み込むと弁護士法72条の問題が生じる、と解説されています
- 条文 弁護士法72条 — 弁護士でない者は、報酬を得る目的で、法律事件に関して鑑定・代理・仲裁・和解その他の法律事務を取り扱うことを業とできない、と定めています(違反は同法77条3号で2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金)( e-Gov法令検索 弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第3条・第72条・第77条 )
- 解釈 専門家解説の紹介 — 伝達を超えて交渉や請求に及ぶと、弁護士法72条にいう法律事務の取扱いにあたりうると解説されています( 加藤ゼミナール「弁護士法72条の解説」 )
- 労働組合 条件つき
-
その組合に加入したうえで、組合の団体交渉として行う形なら扱えるとされています。個人の代理人として交渉する形ではありません
- 条文 労働組合法6条 — 労働組合の代表者または委任を受けた者は、労働組合または組合員のために、使用者と労働協約の締結その他の事項に関して交渉する権限を有する、と定めています( e-Gov法令検索 労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)第6条・第7条 )
- 条文 労働組合法7条2号 — 使用者が団体交渉を正当な理由なく拒むことを、不当労働行為として禁じています( e-Gov法令検索 労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)第6条・第7条 )
- 解釈 専門家解説の紹介 — 労働組合の団体交渉として行う交渉は弁護士法72条違反にあたらないと判示した裁判例がある、と解説されています( 越水法律事務所「退職代行の法的な位置づけ」 )
- 弁護士 頼める
-
代理人として交渉できます。条件の詰めも、まとめた内容の書面化も職務の範囲です
- 条文 弁護士法3条1項 — 弁護士は、当事者その他関係人の依頼によって、訴訟事件その他一般の法律事務を行うことを職務とする、と定めています( e-Gov法令検索 弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第3条・第72条・第77条 )
線その2 — お金の話に入るかどうか
未払いの賃金は、労働条件の話であると同時にお金の請求でもあります。だから労働組合の団体交渉の議題にもなり、弁護士の請求にもなる。⑥の「金額と期日を詰めて合意する」まで来ると、扱いについての見方が分かれます。
⑤ 未払いの賃金・残業代の支払いを求める
サービス残業のぶん、払ってもらいたい
- 民間企業 頼めない
-
お金の請求は法律事件の側です。伝言として口にするだけでも、実質は請求になると解説されています
- 条文 弁護士法72条 — 弁護士でない者は、報酬を得る目的で、法律事件に関して鑑定・代理・仲裁・和解その他の法律事務を取り扱うことを業とできない、と定めています(違反は同法77条3号で2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金)( e-Gov法令検索 弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第3条・第72条・第77条 )
- 解釈 専門家解説の紹介 — 伝達を超えて交渉や請求に及ぶと、弁護士法72条にいう法律事務の取扱いにあたりうると解説されています( 加藤ゼミナール「弁護士法72条の解説」 )
- 労働組合 条件つき
-
賃金は団体交渉の議題になります。組合員として、組合が会社と交渉する形が前提です
- 条文 労働組合法6条 — 労働組合の代表者または委任を受けた者は、労働組合または組合員のために、使用者と労働協約の締結その他の事項に関して交渉する権限を有する、と定めています( e-Gov法令検索 労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)第6条・第7条 )
- 条文 労働組合法7条2号 — 使用者が団体交渉を正当な理由なく拒むことを、不当労働行為として禁じています( e-Gov法令検索 労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)第6条・第7条 )
- 解釈 専門家解説の紹介 — 労働組合の団体交渉として行う交渉は弁護士法72条違反にあたらないと判示した裁判例がある、と解説されています( 越水法律事務所「退職代行の法的な位置づけ」 )
- 弁護士 頼める
-
請求できます。証拠が足りないときに何を集めるかまで含めて扱えるのは、この類型だけです
- 条文 弁護士法3条1項 — 弁護士は、当事者その他関係人の依頼によって、訴訟事件その他一般の法律事務を行うことを職務とする、と定めています( e-Gov法令検索 弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第3条・第72条・第77条 )
⑥ 金額と支払期日を詰めて合意する
いくらを、いつまでに。そこまで決めてきてほしい
- 民間企業 頼めない
-
弁護士法72条は「和解」を条文の中に名指しで置いています。金額の合意をまとめる行為は、その言葉に正面から重なります
- 条文 弁護士法72条 — 弁護士でない者は、報酬を得る目的で、法律事件に関して鑑定・代理・仲裁・和解その他の法律事務を取り扱うことを業とできない、と定めています(違反は同法77条3号で2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金)( e-Gov法令検索 弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第3条・第72条・第77条 )
- 労働組合 条件つき
-
団体交渉の結果として金額の合意に至る形は行われている一方、個別の債権について和解をまとめる行為は72条の「和解」にあたらないかという指摘もあります。ここは解釈が分かれています
- 条文 労働組合法6条 — 労働組合の代表者または委任を受けた者は、労働組合または組合員のために、使用者と労働協約の締結その他の事項に関して交渉する権限を有する、と定めています( e-Gov法令検索 労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)第6条・第7条 )
- 条文 労働組合法7条2号 — 使用者が団体交渉を正当な理由なく拒むことを、不当労働行為として禁じています( e-Gov法令検索 労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)第6条・第7条 )
- 解釈 専門家解説の紹介 — 労働組合の団体交渉として行う交渉は弁護士法72条違反にあたらないと判示した裁判例がある、と解説されています( 越水法律事務所「退職代行の法的な位置づけ」 )
- 条文 弁護士法72条 — 弁護士でない者は、報酬を得る目的で、法律事件に関して鑑定・代理・仲裁・和解その他の法律事務を取り扱うことを業とできない、と定めています(違反は同法77条3号で2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金)( e-Gov法令検索 弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第3条・第72条・第77条 )
- 解釈 両論の紹介 — 団体交渉の枠内なら扱えるという解説と、個別の権利義務の和解は弁護士の領域だとする指摘の両方があります( 加藤ゼミナール「弁護士法72条の解説」 )
- 弁護士 頼める
-
和解は弁護士の職務そのものです。合意書の作り方まで含めて任せられます
- 条文 弁護士法3条1項 — 弁護士は、当事者その他関係人の依頼によって、訴訟事件その他一般の法律事務を行うことを職務とする、と定めています( e-Gov法令検索 弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第3条・第72条・第77条 )
線その3 — 争いになったとき
⑦は、あなたが求める側ではなく求められる側に回った場面です。ここから先は交渉の枠を出るので、届く列が1本になります。会社から金銭の請求が出てきた時点で、この2行だけ見れば選択は終わります。
⑦ 会社からの損害賠償請求に対応する
「損害賠償を請求する」と言われてしまった
- 民間企業 頼めない
-
相手からの請求への反論は、法律事件についての法律事務にあたると解説されています
- 条文 弁護士法72条 — 弁護士でない者は、報酬を得る目的で、法律事件に関して鑑定・代理・仲裁・和解その他の法律事務を取り扱うことを業とできない、と定めています(違反は同法77条3号で2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金)( e-Gov法令検索 弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第3条・第72条・第77条 )
- 解釈 専門家解説の紹介 — 会社から金銭の請求を受けている状態は、弁護士法72条にいう法律事件にあたると解説されています( ベンナビ労働問題「退職代行と弁護士法72条」 )
- 労働組合 頼めない
-
会社からあなた個人に向いた請求は、労働条件の団体交渉とは別の話になると解説されています。ここから先は弁護士に案内されることが多い場面です
- 条文 労働組合法6条 — 労働組合の代表者または委任を受けた者は、労働組合または組合員のために、使用者と労働協約の締結その他の事項に関して交渉する権限を有する、と定めています( e-Gov法令検索 労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)第6条・第7条 )
- 条文 労働組合法7条2号 — 使用者が団体交渉を正当な理由なく拒むことを、不当労働行為として禁じています( e-Gov法令検索 労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)第6条・第7条 )
- 解釈 専門家解説の紹介 — 個別の権利義務をめぐる紛争の処理は、団体交渉の枠を超えて弁護士の職務にあたると解説されています( ベンナビ労働問題「退職代行と弁護士法72条」 )
- 弁護士 頼める
-
反論も、そのまま手続に進む判断も扱えます。金銭の請求が出てきた時点で、この列を見てください
- 条文 弁護士法3条1項 — 弁護士は、当事者その他関係人の依頼によって、訴訟事件その他一般の法律事務を行うことを職務とする、と定めています( e-Gov法令検索 弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第3条・第72条・第77条 )
⑧ 労働審判・訴訟の代理人になる
話し合いで終わらないなら、裁判までやりたい
- 民間企業 頼めない
-
弁護士法72条は「訴訟事件」と「代理」を条文の中に書いています。ここは条文の側で線が引かれている場所です
- 条文 弁護士法72条 — 弁護士でない者は、報酬を得る目的で、法律事件に関して鑑定・代理・仲裁・和解その他の法律事務を取り扱うことを業とできない、と定めています(違反は同法77条3号で2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金)( e-Gov法令検索 弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第3条・第72条・第77条 )
- 労働組合 頼めない
-
団体交渉の権限は交渉までです。訴訟の代理は弁護士の職務として条文に置かれています
- 条文 労働組合法6条 — 労働組合の代表者または委任を受けた者は、労働組合または組合員のために、使用者と労働協約の締結その他の事項に関して交渉する権限を有する、と定めています( e-Gov法令検索 労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)第6条・第7条 )
- 条文 弁護士法72条 — 弁護士でない者は、報酬を得る目的で、法律事件に関して鑑定・代理・仲裁・和解その他の法律事務を取り扱うことを業とできない、と定めています(違反は同法77条3号で2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金)( e-Gov法令検索 弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第3条・第72条・第77条 )
- 条文 弁護士法3条1項 — 弁護士は、当事者その他関係人の依頼によって、訴訟事件その他一般の法律事務を行うことを職務とする、と定めています( e-Gov法令検索 弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第3条・第72条・第77条 )
- 弁護士 頼める
-
代理人として手続を進められます。3類型で、ここまで届くのはこの列だけです
- 条文 弁護士法3条1項 — 弁護士は、当事者その他関係人の依頼によって、訴訟事件その他一般の法律事務を行うことを職務とする、と定めています( e-Gov法令検索 弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第3条・第72条・第77条 )
線の外側 — 事務連絡は、どこでも届く
⑨⑩は物と紙の話です。3類型のどれでも伝えられます。差が出るのは、会社が応じなかったときに次の手があるかどうか。ここだけを見て料金の安い順に選ぶのは、合理的な選び方です。
⑨ 貸与品の返却・私物受け取りの連絡
制服とPCを返したい。ロッカーの私物も取りたい
- 民間企業 頼める
-
送り先や日取りを伝えるだけの事務連絡です。金品の返還そのものは、会社側に労働基準法23条1項の定めがあります
- 条文 労働基準法23条1項 — 使用者は、退職の場合において権利者の請求があったときは、7日以内に賃金を支払い、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない、と定めています( e-Gov法令検索 労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第22条・第23条・第39条 )
- 解釈 専門家解説の紹介 — 本人の意思をそのまま伝える使者にとどまる限り、弁護士法72条の法律事務にはあたらないと解説されています( ベンナビ労働問題「退職代行と弁護士法72条」 )
- 労働組合 頼める
-
同じ事務連絡として扱えます。会社が応じないときに交渉へ進めるのが、この列の強みです
- 条文 労働組合法6条 — 労働組合の代表者または委任を受けた者は、労働組合または組合員のために、使用者と労働協約の締結その他の事項に関して交渉する権限を有する、と定めています( e-Gov法令検索 労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)第6条・第7条 )
- 条文 労働組合法7条2号 — 使用者が団体交渉を正当な理由なく拒むことを、不当労働行為として禁じています( e-Gov法令検索 労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)第6条・第7条 )
- 解釈 専門家解説の紹介 — 労働組合の団体交渉として行う交渉は弁護士法72条違反にあたらないと判示した裁判例がある、と解説されています( 越水法律事務所「退職代行の法的な位置づけ」 )
- 弁護士 頼める
-
事務連絡としても、応じないときの請求としても扱えます
- 条文 弁護士法3条1項 — 弁護士は、当事者その他関係人の依頼によって、訴訟事件その他一般の法律事務を行うことを職務とする、と定めています( e-Gov法令検索 弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第3条・第72条・第77条 )
⑩ 離職票・退職証明書などの交付を求める
失業給付の手続きに要る紙が、まだ届かない
- 民間企業 条件つき
-
あなたの請求を伝えるところまで。会社が出してこないときに履行を迫る段になると、交渉の側に入ると解説されています
- 条文 雇用保険法76条3項・4項 — 離職した者は、従前の事業主に対し、求職者給付を受けるために必要な証明書の交付を請求でき、請求があったときは事業主は交付しなければならない、と定めています( e-Gov法令検索 雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)第76条 )
- 条文 労働基準法22条1項 — 退職の場合に、使用期間・業務の種類・地位・賃金・退職の事由について証明書を請求されたときは、使用者は遅滞なく交付しなければならない、と定めています( e-Gov法令検索 労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第22条・第23条・第39条 )
- 解釈 専門家解説の紹介 — 本人の意思をそのまま伝える使者にとどまる限り、弁護士法72条の法律事務にはあたらないと解説されています( ベンナビ労働問題「退職代行と弁護士法72条」 )
- 労働組合 頼める
-
交付されないときは、そのまま交渉の議題にできます
- 条文 労働組合法6条 — 労働組合の代表者または委任を受けた者は、労働組合または組合員のために、使用者と労働協約の締結その他の事項に関して交渉する権限を有する、と定めています( e-Gov法令検索 労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)第6条・第7条 )
- 条文 労働組合法7条2号 — 使用者が団体交渉を正当な理由なく拒むことを、不当労働行為として禁じています( e-Gov法令検索 労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)第6条・第7条 )
- 解釈 専門家解説の紹介 — 労働組合の団体交渉として行う交渉は弁護士法72条違反にあたらないと判示した裁判例がある、と解説されています( 越水法律事務所「退職代行の法的な位置づけ」 )
- 弁護士 頼める
-
請求できます。手続が止まっている理由の切り分けまで扱えます
- 条文 弁護士法3条1項 — 弁護士は、当事者その他関係人の依頼によって、訴訟事件その他一般の法律事務を行うことを職務とする、と定めています( e-Gov法令検索 弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第3条・第72条・第77条 )
10行に割ると、よくある要約が2つとも崩れます
3類型を1行で説明した表は、どこにでもあります。だいたい「民間は伝えるだけ、労働組合は交渉できる、弁護士は何でもできる」と書いてあります。行を10本にして測ると、前の2つは合っていません。
「民間は伝えるだけ」は、短く言いすぎています
民間企業の列は、10行のうち2行が「頼める」、3行が「条件つき」です。①のほかに、⑨の貸与品の返却や⑩の離職票の請求まで伝えられます。手続きが止まっている理由が「言い出せないこと」だけなら、民間の列で用は足ります。
崩れるのは、会社が条件を出してきた瞬間です。「その日は無理」と言われた時点で用件が③から④へ動き、列が変わります。頼む前に見るべきなのは類型の名前ではなく、自分の用件が④より上か下かです。
「労働組合なら交渉できる」も、そのままではありません
労働組合の列にも「頼めない」が2行あります(⑦⑧)。加えて④⑤は、その組合に加入したうえで団体交渉として行う形が前提になるので「条件つき」に置いています。⑥はさらに慎重で、解釈が分かれている1マスです。
つまり労働組合が強いのは「交渉ができるから」ではなく、交渉までなら届くからです。争いに入ったら列が1本になります。
根拠にした条文が、どの法律のどこにあるか
判定表の各欄は、下の9つの条文の上に乗っています。条番号だけでは e-Gov法令検索を開いた先で迷うので、条文の見出しと、法律の中で置かれている場所まで書き出しました。
| 条文 | 条文に付いている見出し | 法律の中で置かれている場所 | 法令番号・公布日 | 表示されている版の施行日 |
|---|---|---|---|---|
| 弁護士法 3条 | (弁護士の職務) | 第一章 弁護士の使命及び職務 | 昭和二十四年法律第二百五号/1949年6月10日公布 | 2025年10月1日施行(令和五年法律第五十三号による改正) |
| 弁護士法 72条 | (非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止) | 第九章 法律事務の取扱いに関する取締り | 同上 | 同上 |
| 弁護士法 77条 | (非弁護士との提携等の罪) | 第十章 罰則 | 同上 | 同上 |
| 労働組合法 6条 | (交渉権限) | 第二章 労働組合 | 昭和二十四年法律第百七十四号/1949年6月1日公布 | 2026年6月24日施行(令和八年法律第四十六号による改正) |
| 労働組合法 7条 | (不当労働行為) | 第二章 労働組合 | 同上 | 同上 |
| 労働基準法 22条 | (退職時等の証明) | 第二章 労働契約 | 昭和二十二年法律第四十九号/1947年4月7日公布 | 2026年7月17日施行(令和八年法律第六十号による改正) |
| 労働基準法 23条 | (金品の返還) | 第二章 労働契約 | 同上 | 同上 |
| 労働基準法 39条 | (年次有給休暇) | 第四章 労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇 | 同上 | 同上 |
| 雇用保険法 76条 | (報告等) | 第七章 雑則 | 昭和四十九年法律第百十六号/1974年12月28日公布 | 2026年5月13日施行(令和七年法律第三十二号による改正) |
| 民法 627条 | (期間の定めのない雇用の解約の申入れ) | 第三編 債権/第二章 契約/第八節 雇用 | 明治二十九年法律第八十九号/1896年4月27日公布 | 2026年6月24日施行(令和八年法律第四十五号による改正) |
この判定はどう作ったか
判定表は、読む人が作り方を確かめられて初めて使えるものになります。ここに、調べた範囲と、決めごとと、限界を置きます。
1. 条文は原文を取りにいく
根拠にした条文は、すべて e-Gov法令検索の原文で確認しました(弁護士法3条・72条・77条、労働組合法6条・7条、労働基準法22条・23条・39条、雇用保険法76条、民法627条)。確認日は2026-08-22です。要約サイトの引き写しは根拠に使っていません。
2. 「条文の事実」と「解釈」を分けて書く
各欄の根拠には条文と解釈のタグを付けています。混ぜて書くと「法律にそう書いてある」と読まれてしまうためです。
たとえば弁護士法72条には「鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務」という言葉があります。ここまでは条文の事実です。一方、「退職の意思を伝えるだけなら、この法律事務にはあたらない」というのは条文に書かれていることではなく、専門家がそう説明している内容です。だから前者は条文、後者は解釈として並べています。
3. 確からしさは、いちばん弱い環に合わせる
A〜Dの意味は判定表の下に書いたとおりで、この物差しはサイトの全ページで共通です。1つのマスの判定が複数の根拠で支えられているとき、確からしさはいちばん弱い根拠に合わせて付けています。公的な出典が見つからない事柄は、確度を下げるのではなくそのマスごと書きません。
労働組合の④(有給・退職日の交渉)が分かりやすい例です。組合が交渉する権限そのものは労働組合法6条という条文にあります。それでもこのマスをCにしているのは、「退職代行として行う交渉が弁護士法72条に触れないか」という部分が、裁判例の紹介にとどまるからです。条文が1本でも強ければAにする、という付け方をしていません。
4. 解釈が分かれているマスは、寄せずに両方書く
確度Dは30マス中1マス、労働組合の⑥(金額と支払期日を詰めて合意する)です。団体交渉の結果として金額の合意に至る形は行われている一方、個別の債権について和解をまとめる行為は弁護士法72条の「和解」にあたらないかという指摘もあります。どちらか一方に寄せて書くほうが読みやすくなりますが、読みやすさのために片方を消すと、この表の用途が失われます。
5. 書かないと決めていること
- 実在する事業者について、その運営が法に触れるかどうかの判定。
- 「あなたの場合はこうすべき」という個別の助言。判断が要る場面は、相談窓口へ渡して終えます。
- 出典を示せない数字。この面には料金を1つも載せていません(別の面で、公式表示を確認日つきで扱います)。
6. トップの目盛り図との関係
このサイトのトップには、到達範囲を4目盛りで表した図があります。あの図は、この10行を4行に畳んだものです。畳むときのきまりは1つで、「条件つき」は「頼める」の側に入れます。図は2段階しか表せないためです。
| 運営形態 | ① 退職の意思を会社に伝える | ② 有給の消化と退職日を交渉する | ③ 未払い賃金の支払いを求める | ④ 損害賠償の請求や訴訟に対応する | 根拠 |
|---|---|---|---|---|---|
| 民間企業 | 依頼できる | 依頼できない | 依頼できない | 依頼できない | 退職の意思を本人の使者として伝えるところまで。報酬を得る目的で交渉まで踏み込むと弁護士法72条の問題が生じる、と専門家は解説している |
| 労働組合 | 依頼できる | 依頼できる | 依頼できる | 依頼できない | 労働組合の団体交渉として、有給消化・退職日・未払い賃金の交渉まで。団体交渉は弁護士法72条に当たらないと判示した裁判例がある、と解説されている |
| 弁護士 | 依頼できる | 依頼できる | 依頼できる | 依頼できる | 交渉に加えて、訴訟・損害賠償の請求など法律事務全般を扱える |
図の①は判定表の①、②は④、③は⑤、④は⑧に対応します。図と表が食い違っていないことは、公開前に機械で照合しています(
scripts/check-scope-data.mjs)。片方だけを直したまま公開できない作りにしてあります。
7. 更新の方針と、いまの限界
条文が改正されたとき、参照している解説が入れ替わったときに、そのマスの確認日を直します。確認日はマスごとに持っているので、表全体をまとめて「更新しました」と書き替えることはしません。
限界も書いておきます。退職代行そのものについて可否を整理した官公庁の公式ページは、今回の調査では見つかりませんでした。だから判定の多くが、条文と専門家解説の組み合わせ(確度C)になっています。厚生労働省や労働局の説明で確かめられるのは、退職や年次有給休暇そのものの扱いまでです。この状況が変われば、確度は上がります。
眠れない、朝が来るのが怖い — そこまで来ているなら
ここまで、どこまで頼めるかの話をしてきました。ただ、この表を読む体力が残っていないこともあります。
眠れない。食べられない。日曜の夜に動悸がする。そこまで来ているなら、類型を選ぶより先に見てほしい場所があります。厚生労働省のこころの耳に、働く人向けの相談窓口がまとまっています。費用はかかりません。辞めるかどうかを決めてから相談する必要もありません。
辛いのは、耐えなくていいものです。表は逃げませんから、あとから戻ってきてください。
どこまで頼むかは、あなたが決めていい。
頼める範囲は法律が決めていますが、どの行が要るかを決めるのはあなたです。
次にすることは、たぶんこの順番です。
- 自分の用件を、行の番号にする — ①だけで足りるのか、④まで要るのか。困っていることから引く表が近道です。
- 日付を作る — 申し入れから2週間で契約は終わります。数え方は退職は法律上2週間でできる(民法627条と就業規則の関係)に置きました。
- 有給の残りを数える — 退職日から逆に充てると最終出社日が出ます。有給は使い切って辞められる(労基法39条の数え方)へ。
- もめる目があるなら、先に相談先を決める — 未払いの残業代、ハラスメント、金銭の請求。この3つが混ざっているときは、類型より先に相談です。
よくある質問
- 安いところに、有給の交渉もついでに頼めませんか。
- 判定表の④が、その質問の答えになります。民間企業が運営する代行について、条件を詰める交渉まで踏み込むと弁護士法72条の問題が生じる、という解説があります。ただし「有給を使いたい」という希望を伝えるところ(③)までは伝達として扱われるとされています。会社がすんなり通す職場なら③で足りますし、渋られる見込みがあるなら④が要ります。どちらになるかは、あなたのほうが会社をよく知っています。
- 労働組合の退職代行を使うと、その組合に入ることになるんですか。
- 労働組合法6条は、交渉する権限を持つ人を「労働組合の代表者または労働組合の委任を受けた者」とし、交渉できる相手を「労働組合または組合員のために」と書いています。条文の書き方からは、組合員であることが前提になります。実際の加入手続きや費用の扱いは運営ごとに違うので、申し込む前にその会社の説明を確認してください。判定表の④⑤を「条件つき」にしているのは、この前提があるためです。
- この表を見れば、特定の会社が法に触れるかどうか分かりますか。
- 分かりません。この表が並べているのは「運営形態ごとに、どの行為が権限の中に入るとされているか」までで、個別の事業者が実際に何をしているかは含みません。事業者ごとの評価は、このサイトでは行わない方針です(公開している方針は編集方針のページにまとめています)。判断が必要な状況になったら、弁護士か、お住まいの労働局の総合労働相談コーナーへ持っていってください。
- 頼んだあとで話がこじれてきたら、どうなりますか。
- 行の番号が下へ動くことになります。たとえば①だけのつもりで頼んだのに、会社が退職日の条件を出してきたら④に、金銭の請求を持ち出してきたら⑦に移ります。そのとき、いま頼んでいる相手の列がそこまで届いていなければ、届く類型に頼み直すことになります。あらかじめ「こじれる目がある」と思うなら、最初から届く列を選んでおくほうが、費用の総額では小さく済むことがあります。
- 判定が「条件つき」の欄は、結局どっちなんですか。
- 「形を守れば頼める」という意味です。たとえば②の民間企業は、伝言を往復させるところまでは扱えるとされる一方、会社の出した条件にあなたの代わりに返事を決め始めると交渉の側に入る、と解説されています。同じ行為の名前でも、どこまでやるかで扱いが変わる欄に「条件つき」を置いています。何が条件なのかは、各欄の一行に書いてあります。
出典
- e-Gov法令検索 弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第3条・第72条・第77条(確認日 )
- e-Gov法令検索 労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)第6条・第7条(確認日 )
- e-Gov法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号)第627条(確認日 )
- e-Gov法令検索 労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第22条・第23条・第39条(確認日 )
- e-Gov法令検索 雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)第76条(確認日 )
- ベンナビ労働問題「退職代行と弁護士法72条」(確認日 )
- 加藤ゼミナール「弁護士法72条の解説」(確認日 )
- 越水法律事務所「退職代行の法的な位置づけ」(確認日 )
- 厚生労働省 確かめよう労働条件「しっかり学ぼう!働くときの基礎知識」(確認日 )
- 大阪労働局 よくあるご質問(退職・解雇・雇止め)(確認日 )
- 厚生労働省 総合労働相談コーナーのご案内(確認日 )
- 厚生労働省 こころの耳(働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト)(確認日 )