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退職のものさし 辞め方の、ものさし。

「退職給付金」という名前で申請できる給付は、ありません — 4つの制度に切り分ける表

「退職給付金」という名前で申請できる給付は、ありません。

この言葉で探している人が実際に向かう先は、4つあります。傷病手当金、失業給付の基本手当、退職金、退職所得。4つとも根拠法が違い、支給元が違い、条件が違い、申請する窓口も違います。

だから最初にすることは、金額を調べることではありません。自分が探しているのが4つのうちどれかを決めることです。この面は、その切り分けだけを担当します。

急いでいる人のために、この面の答えを4行にします。

  • 働けなくて辞める・休んでいる — 傷病手当金(健康保険法99条・104条)。窓口は健康保険の保険者
  • 働ける状態で仕事を探す — 失業給付の基本手当(雇用保険法10条2項1号・13条)。窓口はハローワーク
  • 会社から支払われる一時金 — 退職金(退職手当)。会社の制度なので、就業規則を見る
  • 税金の話 — 退職所得(所得税法30条1項)。これは給付ではなく、所得の区分です

4つを1枚に並べます

行が「退職給付金」と呼ばれているもの、列が確かめる項目です。横に読むと、自分がどの窓口へ行けばいいかが決まります。

「退職給付金」が指している4つの切り分け(健康保険法・雇用保険法・労働基準法・所得税法の条文/協会けんぽ・ハローワーク・国税庁の公式記載・2026-08-23確認)
呼ばれているもの根拠法(条番号)支給元受け取れる条件申請先同時受給の可否
傷病手当金健康保険法99条1項(支給要件)/52条2号(保険給付の種類)/104条(退職後の継続給付)健康保険の保険者(全国健康保険協会、または勤め先の健康保険組合)業務外の病気・けがの療養で仕事に就けないこと。連続する3日を含み4日以上仕事に就けなかったこと。休業した期間について給与の支払いがないこと(協会けんぽ)加入している保険者。健康保険法施行規則84条が「支給を受けようとする者」が申請書を保険者に提出すると定めています基本手当とは同じ日について不可。退職金・退職所得とは無関係に受け取れます
失業給付(基本手当)雇用保険法10条2項1号(給付の名前)/13条(受給資格)/15条(失業の認定)雇用保険(国)。窓口はハローワーク離職の日以前2年間に被保険者期間が通算12か月以上あること(雇用保険法13条1項)。就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があること(ハローワーク)住居を管轄するハローワーク。雇用保険法15条2項が、本人が出頭して求職の申込みをすると定めています傷病手当金とは同じ日について不可。順番になら受けられます(受給期間の延長)
退職金(退職手当)労働基準法89条3号の2。ただし支払いを義務づける条文はありません(「退職手当の定めをする場合においては」と書かれています)勤め先の会社。企業年金や共済を通じて支払われることもあります会社に退職手当の定めがあること。定めが無ければ支払われません。誰が対象で、いくらで、いつ支払うかは、その定めが決めます勤め先。社内規程に書かれた手続きによります傷病手当金とも基本手当とも両方受け取れます
退職所得所得税法30条1項(「退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与……に係る所得」)なし。これは給付ではなく、税法上の所得区分です退職手当等を受け取ったこと。受け取っていなければ、この区分は発生しません勤め先に「退職所得の受給に関する申告書」を出します(国税庁 No.1420)。出していれば原則として確定申告は不要です給付ではないので、同時受給という考え方がありません

4行目に気づいてもらえたら、この表の役目は半分終わりです。4つのうち1つは、そもそも給付ですらありません。退職所得は税金の分類で、申請すればお金が振り込まれる制度ではありません。

「退職給付金」を、法令の中で機械的に探しました

「制度として無い」と書くからには、探した手順を見せます。

e-Gov法令検索のキーワード検索を使って、日本の法令を横断して「退職給付金」を探しました(2026年8月23日に実行)。ヒットしたのは5つの法令の17か所で、そのすべてが政令か省令でした。法律には1件もありませんでした。

「退職給付金」が出てくる法令(e-Gov法令検索のキーワード検索・全法令横断・2026-08-23実行)
法令種別どんな文脈で出てくるか
相続税法施行令(昭和二十五年政令第七十一号)政令「適格退職年金契約その他退職給付金に関する信託又は生命保険の契約」。相続税の扱いを決めるための言い方
地方税法施行令(昭和二十五年政令第二百四十五号)政令退職金共済団体が、事業主の使用人の退職について支給する金銭を指す言い方
所得税法施行令(昭和四十年政令第九十六号)政令第73条の「特定退職金共済団体の要件」。掛金や被共済者の扱いを決める条文(ヒット数が最も多い)
法人税法施行令(昭和四十年政令第九十七号)政令地方税法施行令と同じく、退職金共済団体が支給する金銭を指す言い方
所得税法施行規則(昭和四十年大蔵省令第十一号)省令特定退職金共済団体の届出・引継ぎの手続き。「引継退職給付金」という語もここに出てきます

中身を1件ずつ読むと、方向がそろっています。17か所すべてが、退職金共済と、退職金にあてる信託・生命保険契約の、税務上の取り扱いを書いた条文でした。「退職金共済団体が、被共済者の退職について支払う金銭」を指す言葉として使われています。

個人が窓口に申請して受け取る給付の名前として使われている箇所は、ひとつもありませんでした。

だからこの面の言い方は「法律に無い言葉」ではありません。「税務の用語としてはあるが、あなたが申請できる給付の名前ではない」が正確なところです。同じ検索は誰でもやり直せます。出典欄のリンクから、同じキーワードで確かめてください。

法律は、給付の名前を全部並べて書いています

なぜ「無い」と言い切れるのか。それは、健康保険法と雇用保険法が給付の名前を条文に列挙しているからです。列挙されている以上、そこに無いものは、その法律の給付ではありません。

法律が列挙している給付の名前(健康保険法52条/雇用保険法10条・2026-08-23確認)
条文列挙されている給付
健康保険法52条
(被保険者に係る保険給付)
療養の給付/入院時食事療養費/入院時生活療養費/保険外併用療養費/療養費/訪問看護療養費/移送費/傷病手当金/埋葬料/出産育児一時金/出産手当金/家族療養費/家族訪問看護療養費/家族移送費/家族埋葬料/家族出産育児一時金/高額療養費/高額介護合算療養費
雇用保険法10条
(失業等給付)
求職者給付=基本手当/技能習得手当/寄宿手当/傷病手当(高年齢求職者給付金・特例一時金・日雇労働求職者給付金) 就職促進給付=就業促進手当/移転費/求職活動支援費 教育訓練給付=教育訓練給付金/教育訓練休暇給付金 雇用継続給付=高年齢雇用継続基本給付金/高年齢再就職給付金/介護休業給付金
確定給付企業年金法29条
確定拠出年金法28条
(企業年金の給付)
確定給付企業年金=老齢給付金/脱退一時金(規約で障害給付金・遺族給付金を追加できる) 確定拠出年金の企業型=老齢給付金/障害給付金/死亡一時金

会社の退職金が企業年金の形をとっている場合も、正式な名前は「老齢給付金」や「脱退一時金」です。どの一覧にも「退職給付金」はありません。

労働基準法11条は、賃金について「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」と書いています。法律は名前で決めていません。だから読者の側も、名前ではなく中身(どんな状態のときに、誰から支払われるか)で選ぶのがいちばん確実です。

「退職給付金と失業手当の違い」の答えは、4通りあります

この2つを並べて検索する人がとても多いのですが、質問の形のままでは答えが1つに決まりません。まず前提を2つ置きます。

「失業手当」も正式名称ではありません。雇用保険法10条2項1号が定めている名前は「基本手当」です。ハローワークの案内も基本手当で通しています。俗称どうしを比べているのが、この質問の混乱のもとです。

そのうえで、「退職給付金」が何を指しているかで、答えが分かれます。

「退職給付金」が指しているものごとの、基本手当との関係(健康保険法99条1項/雇用保険法10条・20条/ハローワークの公式記載・2026-08-23確認)
「退職給付金」が指しているもの基本手当との違い両方受け取れるか
傷病手当金前提にしている状態が正反対です。傷病手当金は「療養のため労務に服することができない」こと(健康保険法99条1項)、基本手当は「いつでも就職できる能力がある」こと(ハローワーク)同じ日については不可。順番になら受けられます
退職金(退職手当)出どころが違います。退職金は会社から、基本手当は雇用保険から。会社に定めがなければ退職金は出ませんが、基本手当のほうは要件を満たせば出ます両方受け取れます
退職所得比べる相手になりません。退職所得は税法上の所得区分で、給付ではないからです(所得税法30条1項)比較の対象外
基本手当そのもの違いはありません。同じものを別の言い方で呼んでいるだけです

傷病手当金と基本手当が同じ日には両立しない理由と、受給期間を延長して順番に受ける手順は、働けないまま辞める人へ:傷病手当金の退職後の継続給付3条件と、退職日の落とし穴にまとめてあります。金額と日数を先に知りたい人は、辞めたあとの生活費を数えたい人へ:失業給付の日額と所定給付日数を出す計算機で自分の数字を出せます。

申請は、本人が窓口に出す形で条文に書かれています

どの制度も、手続きの主語は受け取る本人です。条文をそのまま置きます。

傷病手当金は、健康保険法施行規則84条にこう書かれています。

法第九十九条第一項の規定により傷病手当金の支給を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書を保険者に提出しなければならない。

失業給付は、雇用保険法15条2項です。

前項の失業していることについての認定(以下この款において「失業の認定」という。)を受けようとする受給資格者は、離職後、厚生労働省令で定めるところにより、公共職業安定所に出頭し、求職の申込みをしなければならない。

どちらも「受けようとする者」「受給資格者」が主語です。様式も公開されています。全国健康保険協会は「健康保険傷病手当金支給申請書」の様式をサイトに置いていて、加入している協会けんぽ支部に提出するよう案内しています。ハローワークインターネットサービスは、離職票が届いたら住居を管轄するハローワークで求職の申込みをして離職票を提出する、という流れを書いています。

これらの手続きに手数料がかかるという記載は、協会けんぽとハローワークの公式ページのどちらにもありませんでした。このサイトが書けるのは、確かめられたこの一文までです。

国が「退職給付金」という呼び方ごと、注意喚起を出しています

国民生活センターは令和7年12月3日に「失業保険の給付額等を増やすことができるとうたう申請サポートに注意 ─不正受給を促すかのようなケースも!─」という報道発表を出しています(国民生活センター・2026-08-23確認)。この資料は冒頭で、失業等給付が「一般に『失業保険』や『失業手当』、『失業給付』、『退職給付金』などと呼ばれることもある」と書いています。つまり、あなたがこの言葉で検索した先にある帯を、国が名指ししています。

全国の消費生活センターに寄せられている相談として、資料は3つを挙げています。

国民生活センターが挙げる相談の内容(報道発表資料 令和7年12月3日・2026-08-23確認)
相談の内容資料の記載
増えなかった申請サポートを依頼すれば受給額が増えると期待したが、実際には増えなかった
解約できない途中で解約を希望したが、事業者が認めなかったり、違約金を請求された
不正受給の誘導うつ病などのメンタルの不調はないにもかかわらず、指定のクリニックで受診するよう指示されるなど、不正受給を促すかのような誘導をされた

同じ資料の「消費者へのアドバイス」に、この面で確かめてきたことと重なる記述が2つあります。

ひとつは「失業保険はあくまでも行政機関による審査で決定されるものであり、給付が保証されているわけではありません」。金額と日数を決めているのは条文と行政の審査で、契約した相手ではありません。この面の切り分け表が示しているのも同じ構造です。

もうひとつは資格の話です。資料は「社労士などの資格のない事業者は申請書類の作成や提出を代行することはできず、できるのは情報提供や助言だけです」と書き、根拠として社会保険労務士法27条を注記しています。そして「申請に不安がある場合には、お住まいの地域のハローワークで、申請書類の書き方などの助言を無料で受けることができます」と続けています。

不正受給については、雇用保険法10条の4が返還命令などを定めています。八代市(氷川町・芦北町)消費生活センターは2026年4月の啓発資料で、サポート料66万円を分割で支払っていた20代の事例と、28万円で契約した60代の事例を挙げたうえで、「雇用保険の制度は、法律によって受給資格、金額、期間が明確に定められています。そこに『裏技』や『特別なノウハウ』は存在しません」と書いています(八代市消費生活センター・2026-08-23確認)。

ネットの解説といちばん食い違うところ

1. 「退職給付金」を制度名として説明している解説があります

検索すると、「退職給付金は最大◯◯万円」「退職給付金の受給条件」といった書き方をしているページが並びます。読むと、中身は傷病手当金の説明であることが多いです。

制度の側にその名前が無いので、条件も上限額も、本当は傷病手当金や基本手当のものです。名前が1つにまとまって見えると、4つの制度の条件がひとつづきのものに見えてしまいます。同時に受け取れないはずの2つが、同じページで並んで説明されていることもあります。

名前ではなく、いま自分がどの状態かで選んでください。働けないのか、働けるけれど仕事が無いのか、会社の制度の話なのか、税金の話なのか。4つに分かれるのはそこです。

2. 「企業会計の退職給付」とは別の話です

「退職給付」という言い方は、会社の会計では使われています。財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則は、貸借対照表に載せる引当金について「第一項第七号の引当金は、退職給付引当金その他当該引当金の設定目的を示す名称を付した科目をもつて掲記しなければならない」と定めています。将来支払う退職金を、いまのうちに見積もって負債として並べておくための科目の名前です。

これは会社が自社の帳簿でお金を測るための用語で、個人が申請して受け取る給付の名前ではありません。「退職給付」という言葉を見かけたことがあるのに制度が見つからない、という食い違いは、たいていここが混ざっています。

3. 退職金は、法律が支払いを義務づけていません

労働基準法89条3号の2は、就業規則に書かなければならない事項として、こう定めています。

退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項

読むところは1つです。「定めをする場合においては」。定めがある会社は書きなさい、という条文で、定めなさいとは書かれていません。労働基準法に、退職手当そのものの支払いを使用者に義務づける条文は置かれていません。

だから退職金については、相場を調べるより先に、自分の会社の就業規則を見るほうが早いです。退職手当の章があるかどうか、あるなら誰が対象で、どう計算して、いつ支払われるか。労働基準法89条3号の2が、そこに書いてあるはずの項目を教えてくれています。

このサイトでは退職金の金額を書きません。会社ごとに規程が違うので、公的な出典から相場を出せないからです。受け取ったあとの手取りなら計算できます。税と控除を引いた額は、姉妹サイトの手取りのものさし「退職金の手取り計算機」で出せます。

健康保険組合には、独自の名前の給付があります

ここは正直に限界を書きます。

健康保険法53条は、保険者が健康保険組合である場合には、52条の給付に併せて、規約で定めるところにより保険給付としてその他の給付を行うことができると定めています。これが付加給付と呼ばれるものです。

つまり、勤め先が健康保険組合に入っている人の場合、法律の一覧には無い名前の給付が、その組合の規約に置かれている可能性があります。全国の健康保険組合の規約を、このサイトは確かめていません。だから「あなたの健保組合に、その名前の給付が絶対に無い」とは書きません。

確かめ方は簡単です。保険証(または資格確認書)に書かれている保険者の名前を見て、その組合のサイトで給付の一覧を開いてください。組合が独自に持っている給付なら、そこに載っています。載っていなければ、この面の4つの切り分けに戻ってきてください。

眠れない、朝が来るのが怖い — そこまで来ているなら

ここまで制度の名前と条文の話をしてきました。それでも、この面を開いている人の何割かは、名前を調べる元気も残っていないところにいるはずです。

食べられない。眠れない。日曜の夜になると動悸がする。朝、ベッドから出られない日がある。

厚生労働省のこころの耳に、働く人向けの相談窓口がまとまっています。費用はかかりません。辞めるかどうかを決めてから相談する必要もありません。

傷病手当金の入口は、健康保険法99条1項の「療養のため労務に服することができない」ことです。診てもらうことは、この制度を使うための最初の手順でもあります。受診は、弱さの証明ではなく手続きです。

条文も表も逃げませんから、あとから戻ってきてください。

名前が分からなくても、行き先は決まります。

制度は4つに分かれています。自分がどれかを決めれば、次の窓口はひとつに決まります。

次にすることは、たぶんこの順番です。

  1. いまの状態を1つ選ぶ — 働けないのか、働けるけれど仕事を探すのか、会社の制度の話なのか、税金の話なのか。この面の1枚目の表で決まります。
  2. 働けないなら、被保険者期間を数える — 辞めたあとも続けて受けるには、健康保険に切れずに1年以上入っていることが入口です。条件と退職日の作り方は働けないまま辞める人へ:傷病手当金の退職後の継続給付3条件と、退職日の落とし穴に。
  3. 働けるなら、金額と日数を出す辞めたあとの生活費を数えたい人へ:失業給付の日額と所定給付日数を出す計算機で、自分の賃金と年齢から基本手当日額と所定給付日数が出ます。
  4. 会社に言い出すところで止まっているなら — 誰にどこまで頼めるかは運営の類型で決まります。人に頼みたい人へ:運営3類型に何を頼めるかの判定表で、自分の用件がどの行にあるかを見てください。

名前が1つに見えていたものが4つに分かれた時点で、迷子はもう終わっています。あとは自分の行を横に読むだけです。

よくある質問

退職給付金とは何ですか。
「退職給付金」という名前の給付は、申請して受け取れる制度としては存在しません。この言葉で検索している人が指しているのは、次の4つのどれかです。①傷病手当金(健康保険法99条・104条/支給元は健康保険の保険者)②失業給付の基本手当(雇用保険法10条2項1号・13条/窓口はハローワーク)③退職金=退職手当(会社の制度。労働基準法89条3号の2は「退職手当の定めをする場合においては」と書いており、支払いを義務づける条文はありません)④退職所得(所得税法30条1項。給付ではなく税法上の所得区分です)。4つは根拠法も支給元も条件も申請先も違うので、どれを指しているかを先に決めないと、次に何をすればいいかが決まりません。
退職給付金と失業手当の違いは何ですか。
まず「失業手当」も正式名称ではありません。雇用保険法10条2項1号が定める名前は「基本手当」です。そのうえで、「退職給付金」が何を指しているかで答えが4通りに分かれます。傷病手当金を指しているなら、基本手当とは同じ日について両方は受け取れません。傷病手当金は健康保険法99条1項の「療養のため労務に服することができない」ことが前提で、基本手当はハローワークの説明で「いつでも就職できる能力がある」ことが前提だからです。退職金を指しているなら、基本手当と両方受け取れます。退職所得を指しているなら、それは税金の区分なので比べる相手になりません。「退職給付金」が基本手当そのものの言い換えとして使われていることもあります。
「退職給付金」は、法律にまったく出てこない言葉ですか。
出てきます。ただし法律ではなく、政令と省令です。e-Gov法令検索のキーワード検索で全法令を横断して探したところ(2026年8月23日実行)、相続税法施行令・地方税法施行令・所得税法施行令・法人税法施行令・所得税法施行規則の5つに、合わせて17か所ありました。中身はすべて退職金共済(退職金共済団体が被共済者の退職について支払う金銭)と、退職給付金に関する信託・生命保険契約の、税務上の取り扱いです。個人が窓口に申請して受け取る給付の名前として使われている箇所は、ひとつもありませんでした。「法律に無い」ではなく「税務の用語としてはあるが、申請できる給付の名前ではない」が正確です。
退職給付金の申請は、自分でできますか。
条文は、本人が出す形で書かれています。傷病手当金は健康保険法施行規則84条が「法第九十九条第一項の規定により傷病手当金の支給を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書を保険者に提出しなければならない」と定めています。協会けんぽは「健康保険傷病手当金支給申請書」の様式を公開していて、加入している協会けんぽ支部に提出するよう案内しています。失業給付は雇用保険法15条2項が「失業の認定を受けようとする受給資格者は、離職後、厚生労働省令で定めるところにより、公共職業安定所に出頭し、求職の申込みをしなければならない」と定めており、ハローワークの案内も、住居を管轄するハローワークで求職の申込みをして離職票を提出する流れになっています。なお、これらの手続きに手数料がかかるという記載は、協会けんぽとハローワークの公式ページのどちらにもありません。
退職金は、辞めれば必ずもらえるものですか。
会社に退職手当の定めがあるかどうかで決まります。労働基準法89条3号の2は、就業規則に書かなければならない事項として「退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項」を挙げています。「定めをする場合においては」という条件つきの書き方で、退職手当そのものの支払いを使用者に義務づける条文は労働基準法に置かれていません。だから、まず自分の会社の就業規則に退職手当の章があるかを見るのが最初の一手になります。金額の見当は、規程に書かれた計算方法で出します。
傷病手当金と失業給付は、順番になら両方受け取れますか。
順番にできます。ハローワークは、病気・けが・妊娠・出産・育児等の理由で引き続き30日以上働くことができなくなったときは、その日数だけ受給期間を延長でき、延長できる期間は最長で3年間と案内しています。雇用保険法20条1項も、加算された期間が4年を超えるときは4年とすると定めています。まず傷病手当金で療養して、働ける状態になってから基本手当を受ける、という順番が制度の中に用意されています。基本手当の受給期間は原則として離職の日の翌日から1年なので、延長の手続きをしないまま療養していると、その1年が過ぎてしまいます。
退職金の手取りはいくらになりますか。
このサイトでは退職金の金額を出しません。退職金の額は会社の規程で決まるので、公的な出典から相場を書くことができないからです。税と控除を引いたあとの手取りは、姉妹サイト「手取りのものさし」の退職金の手取り計算機で出せます。税法上の枠組みだけ書くと、退職により一時に受ける給与は所得税法30条1項の退職所得にあたり、国税庁は退職所得控除額を勤続年数20年以下なら40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)、20年超なら800万円+70万円×(勤続年数−20年)と説明しています。

出典

  1. e-Gov法令検索 健康保険法(大正十一年法律第七十号)第52条・第99条・第104条(確認日
  2. e-Gov法令検索 健康保険法施行規則(大正十五年内務省令第三十六号)第84条(確認日
  3. e-Gov法令検索 雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)第10条・第13条・第15条・第17条・第20条(確認日
  4. e-Gov法令検索 労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第11条・第89条(確認日
  5. e-Gov法令検索 所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第30条(確認日
  6. e-Gov法令検索 確定給付企業年金法(平成十三年法律第五十号)第29条(確認日
  7. e-Gov法令検索 確定拠出年金法(平成十三年法律第八十八号)第28条(確認日
  8. e-Gov法令検索 財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(昭和三十八年大蔵省令第五十九号)(確認日
  9. e-Gov法令検索 キーワード検索「退職給付金」(全法令横断・2026-08-23実行)(確認日
  10. 全国健康保険協会(協会けんぽ) 病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)(確認日
  11. 全国健康保険協会(協会けんぽ) 健康保険傷病手当金支給申請書(確認日
  12. ハローワークインターネットサービス 雇用保険の具体的な手続き(確認日
  13. ハローワークインターネットサービス 基本手当について(確認日
  14. 国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)(確認日
  15. 厚生労働省 こころの耳(働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト)(確認日